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転職の始め方

公務員の転職で年収は下がる?退職金・失業保険・保険の切り替え

公開 更新 読了 約12分
執筆: 林 祐輝

この記事の要点

  • 年収が下がるかどうかは、月給だけでなく賞与・手当・退職金まで含めて比べないと判断できない。国家公務員の行政職(一)の平均給与月額は428,451円(令和8年調査、賞与・残業代を含まない)。
  • 自己都合で辞めると退職手当は減額される。国家公務員の場合、勤続10年以下は本来の額の60%、11〜15年は80%、16〜19年は90%になり、さらに当分の間83.7%を掛ける。
  • 常勤の公務員は原則として雇用保険の対象外で、いわゆる失業保険はない。退職手当が雇用保険の基本手当の総額に届かない場合だけ、差額が「失業者の退職手当」として支給される。
  • 退職の翌日から共済組合の組合員ではなくなる。転職先の健康保険・任意継続・国民健康保険のどれにするかと、住民税の残りの納め方を退職前に決めておく。
目次

公務員から民間へ転職すると年収が下がるかどうかは、職種と年齢、そして何を年収に含めて比べるかで変わります。はっきり言えるのは、月給の額面だけで判断すると見誤るということです。公務員には賞与と各種手当があり、自己都合で辞めると退職手当は減額され、常勤なら雇用保険に入っていないため失業給付もありません。この記事では、転職前に知っておきたいお金の論点を、人事院・総務省・国税庁の統計と法令の条文に沿って順に整理します。

公務員の給与水準と民間の平均給与

まず比べる材料をそろえます。公務員の給与は人事院(国家公務員)と総務省(地方公務員)が、民間の給与は国税庁が毎年統計を公表しています。

公務員の平均給与月額

出典: 人事院「令和8年国家公務員給与等実態調査」、総務省「令和7年地方公務員給与実態調査」
区分平均給与月額うち俸給・給料平均年齢
国家公務員 行政職俸給表(一)428,451円342,178円41.7歳
国家公務員 全俸給表439,356円356,257円41.7歳
地方公務員 一般行政職413,968円――

ここでいう平均給与月額は、俸給(給料)に地域手当・扶養手当・住居手当などを足した毎月の額です。国家公務員の数値には超過勤務手当(残業代)と期末・勤勉手当(ボーナス)が含まれていません。年収に直すには、この月額の12か月分に賞与と残業代を加える必要があります。月額だけを12倍すると、行政職(一)で約514万円です。

民間の平均給与

出典: 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」(1年を通じて勤務した給与所得者)
区分平均給与(年間)うち賞与平均年齢
全体487万円75万円47.3歳
男性597万円96万円47.5歳
女性342万円47万円47.1歳

国税庁の平均給与は賞与を含む年間の額で、正社員だけでなくパート・アルバイトなども含みます。公務員の月額と単純に並べることはできません。年齢構成も違うため、平均同士の比較は目安にとどめ、自分の年齢と職種で比べることが大切です。

比べるなら「総額」でそろえる転職先の求人票に書かれた年収には、賞与の想定や固定残業代が含まれていることがあります。現職側も源泉徴収票の支払金額(賞与・残業代込み)でそろえると、同じ物差しで比べられます。

転職で年収が下がりやすいケース・上がりやすいケース

公務員から民間へ移ったときの年収は、行き先によって大きく分かれます。全体として上がる、下がると言い切れるデータはありません。傾向として整理できるのは次のような違いです。

年収が変わりやすい要因
要因下がりやすい方向上がりやすい方向
職種未経験の職種に移る公務で培った専門性(法務・会計・ITなど)を活かせる職種
企業規模・業界賞与の少ない小規模企業賞与水準の高い大企業や業界
手当住居手当・扶養手当がない会社家族手当・住宅補助が手厚い会社
年齢経験年数を評価されにくい年齢での未経験転職若手のうちにポテンシャル採用を受ける
残業固定残業代込みの年収表示残業代が全額支給される会社

公務員の給与は年齢と経験年数に応じて上がる仕組みのため、民間の未経験職種に移ると、経験の評価が一度リセットされる形になりやすい点に注意が必要です。20代であれば未経験でも採用されやすく、年収差を後から取り戻しやすい傾向があります。年代別の進め方は20代の公務員が転職するときの考え方で詳しく扱っています。

  • 源泉徴収票で、昨年の支払金額(賞与・残業代込み)を確認した
  • 住居手当・扶養手当・通勤手当の月額を把握した
  • 転職先の年収に固定残業代が含まれているか確認した
  • 転職先の賞与が「想定」か「実績」かを確認した
  • 転職先の退職金制度(有無・算定方法)を確認した

企業の平均年収を調べるときは、上場企業なら有価証券報告書の「従業員の状況」が一次情報になります。読み方の注意点は有価証券報告書の平均年収の見方にまとめています。面接で希望額を聞かれたときに現職の年収をどう伝えるかは希望年収の答え方が参考になります。

自己都合で辞めたときの退職手当はいくらになるか

公務員の退職金は、法令上は「退職手当」と呼ばれます。国家公務員は国家公務員退職手当法で、地方公務員は各自治体の退職手当条例で決まります。ここでは条文を確認できる国家公務員の仕組みで説明します。

計算式の基本

退職手当の額は「基本額」と「調整額」の合計です(第2条の4)。基本額は、退職日の俸給月額に、勤続年数に応じた支給割合を掛けて求めます(第3条第1項)。俸給月額は手当を含まない本給部分なので、毎月の手取りから想像する額より小さくなります。

出典: 国家公務員退職手当法 第3条(e-Gov 法令検索で確認)
勤続期間の区分1年あたりの支給割合自己都合のときに掛ける割合
1〜10年の部分100%勤続1〜10年の人は60%
11〜15年の部分110%勤続11〜15年の人は80%
16〜20年の部分160%勤続16〜19年の人は90%
21〜25年の部分200%―
26〜30年の部分160%―
31年以上の部分120%―

自己都合で退職した場合は、第3条第2項により、勤続年数に応じて上の表の右列の割合が掛けられます。さらに附則で、当分の間、勤続35年以下の人は基本額に83.7%を掛けると定められています。調整額は在職中の職責に応じた加算で、自己都合で勤続9年以下の人はゼロ、勤続10〜24年の人は本来の額の2分の1です(第6条の4第4項)。

計算例(調整額を除く基本額)

国家公務員退職手当法 第3条と附則第6項の割合で試算。俸給月額は説明用の仮の値
条件計算基本額
勤続5年・俸給月額22万円22万円×5年×100%×60%×83.7%約55万円
勤続8年・俸給月額25万円25万円×8年×100%×60%×83.7%約100万円
勤続12年・俸給月額30万円30万円×(10年×100%+2年×110%)×80%×83.7%約245万円(+調整額の2分の1)

勤続が短いほど、自己都合による減額の影響は大きくなります。実際の額は所属先の人事・給与担当に試算を依頼すれば確認できます。退職手当は原則として退職日から1か月以内に支払われます(第2条の3第2項)。

地方公務員は自治体の条例を確認地方公務員の退職手当は、各自治体の退職手当条例で定められています。国の制度にならった仕組みの自治体が多いものの、支給割合や調整額の細部は自治体ごとに条例で確認する必要があります。

民間企業に移ると、退職金は転職先の制度で勤続ゼロから積み上がります。退職金制度がない会社もあるため、生涯の受取額で考えると、月給の差以上に差が開くことがあります。福利厚生まで含めた会社選びの基準はホワイト企業の基準を参考にしてください。

公務員に失業保険(雇用保険)はない

民間の会社員が退職後に受け取る「失業保険」は、正式には雇用保険の基本手当です。常勤の公務員はこの雇用保険に入っていません。

雇用保険法第6条の適用除外

雇用保険法第6条第6号は、国や都道府県、市町村などに雇用される人のうち、離職時に他の法令や条例で受ける給与の内容が求職者給付・就職促進給付を超えると認められる人を、雇用保険の対象から外しています。具体的な範囲は雇用保険法施行規則第4条で定められ、国家公務員退職手当法の適用を受ける常勤の国家公務員と、承認を受けた自治体の職員が該当します。給与明細に雇用保険料の控除がないのはこのためです。

代わりにある「失業者の退職手当」

その代わりに設けられているのが、国家公務員退職手当法第10条の「失業者の退職手当」です。勤続12か月以上(倒産・解雇などに相当する特定退職者は6か月以上)で退職し、受け取った退職手当の額が、雇用保険に入っていたと仮定した場合の基本手当の総額(基本手当の日額×所定給付日数)に満たないとき、その差額分が支給されます。

  1. 雇用保険に入っていたと仮定して基本手当を計算する勤続期間を被保険者期間とみなし、基本手当の日額と所定給付日数を出します。自己都合退職などの一般の受給資格者なら、所定給付日数は算定基礎期間10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です(雇用保険法第22条)。
  2. 退職手当を日額で割って「待期日数」を出す受け取った退職手当の額を基本手当の日額で割った日数が待期日数になります。この日数分の失業期間は、すでに退職手当で手当てされたものとして扱われます。
  3. 待期日数を超えて失業している日だけ支給される待期日数を超えて失業している日について、基本手当の日額相当が公共職業安定所を通じて支給されます。上限は所定給付日数から待期日数を引いた日数分で、支給は雇用保険の基本手当と同じ条件に従います。

たとえば退職手当が約100万円で、仮に基本手当の日額が5,000円だとすると、待期日数は200日です。所定給付日数が90日なら200日を超えることはないため、差額は支給されません。勤続が長く退職手当が多い人ほど、この制度による支給は発生しにくくなります。地方公務員についても、各自治体の退職手当条例に同様の規定が置かれています。

収入が途切れない辞め方を優先する失業給付を当てにできない前提で考えると、内定を得てから退職日を決める在職中の転職活動が安全です。進め方は在職中の転職活動のコツにまとめています。公務員が在職中に活動するときの規制や注意点は公務員を辞めたいときに確認することで扱っています。

共済組合から健康保険・厚生年金への切り替え

公務員は共済組合に加入しています。退職すると組合員の資格を失うため、健康保険と年金の手続きが必要になります。

健康保険は4つの選択肢から選ぶ

出典: 国家公務員共済組合法 第126条の5、地方公務員等共済組合法 第144条の2(e-Gov 法令検索で確認)
選択肢条件・期限保険料の考え方
転職先の健康保険退職翌日に入社すれば空白なし会社と折半
共済組合の任意継続1年以上組合員だった人が、退職日から20日以内に申出。最長2年組合と国・自治体の負担分を合わせた額を本人が払う
国民健康保険住所地の市区町村で加入手続き前年の所得などで決まる
家族の健康保険の被扶養者収入などの要件を満たす場合本人負担なし

退職日の翌日に転職先へ入社する場合は、転職先の健康保険に切り替わるだけで空白期間は生じません。退職から入社まで間が空く場合は、任意継続と国民健康保険の保険料を両方試算して、安いほうを選ぶのが基本です。任意継続は申出期限が退職日から20日と短いため、退職前に共済組合へ必要書類を確認しておくと安心です。

年金は厚生年金のまま続く

2015年10月の被用者年金の一元化により、公務員も厚生年金に加入しています。そのため民間企業へ転職しても厚生年金の加入は続き、加入期間は通算されます。退職から入社までに空白期間がある場合は、その間は国民年金の第1号被保険者として、住所地の市区町村で手続きをして保険料を納めます。

住民税と退職手当にかかる税金

住民税は前年の所得にかかる

住民税は前年の所得に対して課税され、在職中は毎月の給与から天引き(特別徴収)されています。退職すると給与からの天引きが止まるため、残りの納め方を決める必要があります。地方税法第321条の5第2項で、退職時期ごとの扱いが定められています。

出典: 地方税法 第321条の5第2項(e-Gov 法令検索で確認)
退職した時期残りの住民税の扱い
1月1日〜4月30日5月分までの残額を、最後の給与や退職手当から一括して差し引く(支払額が残額を超える場合)
6月1日〜12月31日本人が申し出れば一括で差し引く。申し出なければ、自分で納付書で納める普通徴収に切り替わる

すぐに次の勤務先へ移る場合は、転職先で特別徴収を引き継ぐ手続きができることがあります。退職時の給与担当と転職先の人事に、どちらの方法を取るかを確認しておくと、納付書が届いて慌てることがありません。

退職手当は「退職所得」として別に課税される

退職手当は給与とは分けて、退職所得として課税されます。退職所得控除額は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)、20年を超えると800万円に70万円×(勤続年数−20年)を足した額です(所得税法第30条)。収入から控除額を引いた残りの2分の1が課税対象になるのが基本です。勤続年数が短い自己都合退職では、退職手当の額が控除額の範囲に収まり、税金がかからないことも少なくありません。

転職前にお金の面で準備しておくこと

  1. 現在の年収を総額で把握する源泉徴収票の支払金額と、住居手当・扶養手当などの内訳を確認します。転職先の提示額と比べる基準になります。
  2. 退職手当の見込み額を試算してもらう人事・給与担当に、自己都合で退職した場合の見込み額を確認します。退職月を数か月ずらすと勤続年数の区分が変わる場合は、その差も確かめておきます。
  3. 生活費の数か月分を確保する失業給付がない前提で、入社までの空白や初任給の支給日までをまかなえる手元資金を用意します。
  4. 健康保険と住民税の方針を決める空白期間がある場合は任意継続と国民健康保険の保険料を比べ、住民税を一括で払うか普通徴収にするかを決めておきます。
  5. 内定の条件を書面で確認する年収の内訳(基本給・賞与・固定残業代・手当)と退職金制度の有無を、労働条件通知書で確かめてから退職日を決めます。

公務員から民間への転職全体の流れは公務員から民間企業へ転職する方法で解説しています。応募書類では、公務の経験を民間の言葉に置き換えることが評価を左右します。書き方は公務員の職務経歴書の書き方を参照してください。

まとめ

公務員から民間へ転職して年収が下がるかどうかは、月給だけでなく賞与・手当・残業代・退職金を含めた総額で比べないと判断できません。自己都合退職の退職手当は勤続年数に応じて減額され、常勤の公務員には雇用保険の失業給付もありません。退職手当が基本手当の総額に届かない場合に限って差額が支給される「失業者の退職手当」はありますが、多くの場合は支給されにくい仕組みです。内定を得てから退職日を決め、健康保険と住民税の手続きを先に確認しておけば、お金の面で困ることは大きく減らせます。

よくある質問

公務員から民間に転職すると、年収は必ず下がりますか。
必ず下がるわけではありません。公務で得た専門性を活かせる職種や、賞与水準の高い企業に移れば上がることもあります。一方、未経験の職種に移ると経験の評価がリセットされやすく、下がることがあります。月給だけでなく賞与・手当・退職金を含めた総額で比べてください。
公務員が自己都合で辞めると、退職金はどのくらい減りますか。
国家公務員の場合、勤続10年以下は本来の基本額の60%、11〜15年は80%、16〜19年は90%になります。さらに当分の間、勤続35年以下の人は83.7%が掛けられます。地方公務員は各自治体の条例で決まるため、所属先の給与担当に試算を依頼するのが確実です。
公務員は辞めた後に失業保険をもらえますか。
常勤の公務員は原則として雇用保険の対象外のため、いわゆる失業保険はありません。代わりに、受け取った退職手当が雇用保険の基本手当の総額に満たない場合に限り、差額が「失業者の退職手当」として支給されます。退職手当がある程度の額になると、支給されないことが多い仕組みです。
退職後の健康保険は、任意継続と国民健康保険のどちらが得ですか。
人によって異なるため、両方の保険料を試算して比べるのが基本です。任意継続は組合と国・自治体の負担分も本人が払う形になり、国民健康保険は前年の所得などで決まります。任意継続は退職日から20日以内に申し出る必要があるため、退職前に比べておくと安心です。
公務員を退職した後の住民税はどうなりますか。
住民税は前年の所得にかかるため、退職後も納める必要があります。1月から4月に退職した場合は、5月分までの残額が最後の給与や退職手当から一括で差し引かれます。6月から12月の退職では、申し出れば一括、申し出なければ自分で納める普通徴収に切り替わります。
公務員の年金は、民間に転職するとどうなりますか。
2015年10月の被用者年金一元化以降、公務員も厚生年金に加入しているため、民間企業に転職しても厚生年金の加入は続き、期間は通算されます。退職から入社までに空白がある場合は、その間は国民年金の第1号被保険者として手続きと保険料の納付が必要です。

この記事を書いた人

林 祐輝

リードキャリア キャリアアドバイザー

人材紹介の現場で求職者と企業の双方に向き合い、ホワイト企業に絞った転職支援を行う。SNSでは採用の裏側や企業選びの考え方を発信し、複数アカウントで累計数万人に届ける。

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