公務員を辞めたいときに確認すること|辞める前の判断と退職手続き

この記事の要点
- 辞めたい理由が部署・人間関係・業務量にあるなら、異動希望や休職・休業など、辞めずに環境を変えられる制度を先に確認する。
- 仕事内容・給与体系・働き方そのものを変えたいなら、退職して民間に移る選択に意味がある。理由で判断が分かれる。
- 在職中の転職活動は可能。ただし営利企業との兼業は許可制で、国家公務員は職務の利害関係企業への求職が法律で規制されている。
- 辞職は書面で申し出て任命権者の承認を受ける。年度末や賞与の基準日、引継ぎを考えて時期を決め、退職前のチェックリストで漏れを防ぐ。
目次
公務員を辞めたいと感じたとき、最初にやるべきことは退職届を書くことではなく、辞めたい理由を「職場を変えれば解決するもの」と「公務員という働き方を変えないと解決しないもの」に分けることです。前者なら異動希望・休職・休業といった、辞めずに使える制度があります。後者なら退職して転職する意味があります。そのうえで辞めると決めたら、辞職は書面で申し出て任命権者の承認を受ける手続きになり、在職中の転職活動には兼業や求職に関する法律上の制限があります。この記事では、辞める前に確認することを順番に整理します。
公務員を辞めたいと感じる理由を整理する
「辞めたい」という気持ちは、いくつかの不満が重なって生まれることがほとんどです。まずは紙に書き出し、どれがいちばん大きいのかを見ます。公務員から辞めたいという相談でよく挙がる理由は、おおむね次の5つに分けられます。
人間関係・上司との相性
公務員は数年ごとの人事異動が前提の組織です。今の上司や同僚との関係がつらい場合、異動で状況が大きく変わることがあります。一方で、パワーハラスメントに当たるような状況なら、異動を待たずに相談窓口を使うべき問題です。
業務量・残業・窓口対応の負担
繁忙な部署と比較的落ち着いた部署の差が大きいのも公務員の特徴です。忙しさが部署の特性によるものか、組織全体の傾向なのかで、取るべき手段が変わります。心身に不調が出ているなら、判断の前に休むことを優先してください。
仕事内容・やりがい・成長実感
前例踏襲や調整業務が多く、自分の裁量で成果を出す実感が持てない、専門性が身につかないと感じる方もいます。これは部署を変えても残りやすい理由で、民間への転職を考える根拠になりやすいものです。
給与・評価の仕組み
公務員の給与は法律や条例に基づく俸給表で決まり、成果を出しても短期間で大きく上がる仕組みではありません。年功的な給与体系そのものに不満がある場合は、職場を変えても解決しにくい理由です。お金の比較については公務員から転職したときの年収・退職金の話で詳しく扱っています。
将来のキャリア・市場価値への不安
「このまま続けて、外で通用するスキルが残るのか」という不安です。年齢が上がるほど転職の選択肢が狭まるのではという焦りも重なります。20代の方は20代公務員の転職の進め方もあわせて読むと、時間軸で考えやすくなります。
| 辞めたい理由 | 辞めずに変わる可能性 | 転職で変わる可能性 |
|---|---|---|
| 人間関係・上司との相性 | 高い(異動・相談窓口) | 変わるが、転職先でも起こりうる |
| 業務量・残業 | 部署によっては高い(異動・休職) | 業界・職種の選び方次第 |
| 仕事内容・やりがい | 低め(同じ組織の中での変化にとどまる) | 高い(職種そのものを選べる) |
| 給与・評価の仕組み | 低い(法律・条例で決まる) | 高い(成果連動の会社を選べる) |
| 将来のキャリア・スキル | 部署次第で一部 | 高い(専門性を軸に選べる) |
辞めずに変えられる選択肢:異動・休職・休業・相談窓口
公務員には、職を保ったまま働き方を変えられる制度がいくつかあります。退職は取り消しが難しい決断なので、使える制度を一度確認してから判断しても遅くはありません。制度の細かな運用は国と自治体、組織ごとに違うため、最終的には所属の人事担当や規程で確認してください。
異動希望を出す
多くの組織では、定期的な面談や自己申告の書類などで異動の希望を伝える機会があります。希望がそのまま通るとは限りませんが、人間関係や業務量が理由なら、まず使いたい手段です。希望を出すときは「今の部署が嫌だ」ではなく、「どの分野で何をしたいか」を具体的に書くほうが人事に伝わります。
心身の不調があるときの休職
国家公務員法第79条と地方公務員法第28条第2項は、心身の故障のため長期の休養を要する場合に休職できることを定めています。休職中も職は保たれます。不調を抱えたまま退職や転職活動を急ぐと判断を誤りやすいため、まず医師の診断を受け、休むことを優先してください。給与の扱いや期間は法令・規則・条例で定められているので、人事担当に確認します。
自己啓発等休業・育児休業・配偶者同行休業
職を保ったまま一定期間離れられる休業制度もあります。大学院で学び直したい、海外でボランティアをしたいといった理由で「一度外に出たい」と考えているなら、退職以外の道として検討できます。
| 制度 | 内容 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 休職 | 心身の故障で長期の休養を要する場合などに、職を保ったまま休む | 国家公務員法第79条、地方公務員法第28条第2項 |
| 自己啓発等休業 | 大学等での修学や国際貢献活動のための無給の休業。国家公務員は在職2年以上が要件で、修学は原則2年、国際貢献活動は3年を超えない範囲 | 国家公務員の自己啓発等休業に関する法律、地方公務員法第26条の5 |
| 育児休業 | 子が3歳に達する日まで、任命権者の承認を受けて休業する | 国家公務員の育児休業等に関する法律、地方公務員の育児休業等に関する法律 |
| 配偶者同行休業 | 外国で勤務する配偶者などと生活を共にするための休業。3年を超えない範囲 | 国家公務員の配偶者同行休業に関する法律、地方公務員法第26条の6 |
苦情相談・ハラスメントの相談窓口
国家公務員(一般職)は、所属府省の相談窓口のほか、人事院の苦情相談を利用できます。人事院は勤務条件や人事管理に関する職員の苦情相談を受け付けています。地方公務員の場合、地方公務員法第8条で人事委員会または公平委員会の事務として「職員の苦情を処理すること」が定められています。上司に言いにくいことほど、組織の外に近い窓口を使う意味があります。
辞めるか続けるかを判断するチェックポイント
制度を確認したうえで、それでも辞めたいかどうかを判断します。次の項目のうち、当てはまるものが多いほど、退職して転職する選択に合理性があります。
- 辞めたい理由が、異動しても残る種類のもの(仕事内容・給与体系・働き方)である
- 異動希望や相談窓口など、辞めずに変えられる手段を一度は検討した
- 転職先で何を得たいか(職種・年収・働き方・勤務地)を言葉にできる
- 心身の不調で判断力が落ちている状態ではない
- 民間企業の求人を実際に見て、応募できそうな仕事を把握している
- 退職後の収入が途切れた場合の生活費の見通しを立てている
- 家族など、生活に影響する人と話をしている
転職の全体像を先に知りたい方は、公務員から民間企業への転職ガイドで、求人の探し方から内定までの流れをまとめています。転職活動の基本的な順番は転職活動の始め方も参考になります。
在職中に転職活動を進めるときの注意点
公務員も、在職中に転職活動をすること自体は禁止されていません。収入を保ったまま次を決められるため、在職中に進めるのが基本です。ただし公務員には、民間の会社員にはない法律上の制限があります。進め方の一般論は在職中の転職活動の進め方で解説しているので、ここでは公務員特有の点に絞ります。
営利企業での兼業は許可制
国家公務員法第103条は、営利企業の役員などを兼ねたり、自ら営利企業を営んだりすることを原則として禁じています。第104条は、報酬を得て他の事業や事務に従事する場合に許可を要すると定めています。地方公務員も、地方公務員法第38条で、任命権者の許可を受けなければ営利企業の役員等を兼ねたり、報酬を得て事業や事務に従事したりしてはならないとされています。転職先の候補企業で「お試しで副業として働く」といった進め方は、許可なしにはできないと考えてください。
国家公務員は利害関係企業への求職が規制されている
国家公務員法第106条の3は、職員が職務の利害関係企業等に対して、離職後にその企業の地位に就くことを目的として自己の情報を提供したり、地位に就くことを要求・約束したりすることを禁じています。たとえば許認可や契約、検査などで担当している企業に、在職中に自分から応募することは、この規制に当たる可能性があります。意思決定の権限を実質的に持たない官職として政令で定めるものに就いている職員など、適用されない場合も条文に定められていますが、判断に迷うときは応募前に人事担当へ確認するのが確実です。
また第106条の23により、国家公務員は離職後に営利企業等の地位に就くことを約束した場合、速やかに任命権者に届け出なければなりません。内定を承諾したら、退職の申し出とあわせて届出が必要かどうかを確認してください。地方公務員については、地方公務員法第38条の6に基づき、自治体が条例で届出などの仕組みを設けている場合があります。
守秘義務は退職後も続く
国家公務員法第100条と地方公務員法第34条は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならず、退職後も同様であると定めています。面接で「前職の実績」を話すときも、個人情報や公表されていない行政情報には触れず、自分の役割や工夫を中心に話します。職務経歴書の書き方は公務員の職務経歴書・自己PRの書き方で具体例を紹介しています。
勤務時間中の活動と庁内の端末
公務員には職務に専念する義務があります。面接は勤務時間外や休暇を使って受け、求人の閲覧や応募書類の作成に職場のパソコンやメールを使うのは避けてください。応募先とのやり取りは私用の電話とメールアドレスにまとめておくと、取り違えも防げます。
| 確認すること | 国家公務員 | 地方公務員 |
|---|---|---|
| 営利企業の役員兼業・自営 | 原則禁止(第103条) | 任命権者の許可が必要(第38条) |
| 報酬を得て他の事業・事務に従事 | 許可が必要(第104条) | 任命権者の許可が必要(第38条) |
| 利害関係企業への求職 | 原則禁止(第106条の3) | 法律上の同様の規定はなく、条例・規程を確認 |
| 再就職の約束をしたときの届出 | 任命権者へ届出(第106条の23) | 条例で定める場合あり(第38条の6) |
| 守秘義務 | 退職後も続く(第100条) | 退職後も続く(第34条) |
辞めると決めたら:退職の伝え方と手続きの流れ
公務員の退職(辞職)は、職員が申し出て任命権者が承認する形で行われます。国家公務員については、人事院規則8-12(職員の任免)第51条に「任命権者は、職員から書面をもって辞職の申出があったときは、特に支障のない限り、これを承認するものとする」とあります。地方公務員の手続きは自治体ごとの規則や規程で定められているので、所属の人事担当に様式と提出先を確認します。
- 転職先の内定を得て、入社日を確定させる在職中に活動した場合は、内定承諾の前に入社日の希望を伝えます。退職日から逆算して、引継ぎに必要な期間を確保できる日付にします。
- 直属の上司に、口頭で退職の意思を伝える最初に伝える相手は直属の上司です。同僚に先に話すと、上司が人づてに知ることになり、話がこじれやすくなります。相談ではなく、決めたこととして伝えます。
- 退職日と引継ぎの段取りを上司と決める公務員は年度単位で人員配置が組まれるため、後任の手当てや業務の割り振りに時間がかかることがあります。担当業務を一覧にし、引継ぎの順番を一緒に決めます。
- 辞職願(退職願)を書面で提出する所属の様式に沿って提出します。国家公務員の辞職は書面での申出が前提です。提出後、任命権者の承認を経て退職日が確定します。
- 再就職の届出や返却物、各種手続きを済ませる国家公務員は再就職を約束した場合の届出が必要です。身分証や貸与物の返却、共済組合や住民税の扱い、退職手当の手続きなどを人事・給与担当と確認します。
退職のタイミングの考え方
退職を伝える時期は、退職希望日の1〜3か月前が目安です。公務員の場合は年度単位で人事異動や予算が動くため、年度末で区切ると後任の配置と合わせやすく、引継ぎもしやすくなります。ただし転職先の入社日は年度に合わせてくれるとは限らないため、内定先と職場の両方と調整して決めます。
賞与の時期も確認しておきたい点です。国家公務員の期末手当は、一般職の職員の給与に関する法律第19条の4で、6月1日と12月1日の基準日に在職する職員に支給すると定められています。地方公務員は各自治体の条例で定められています。退職日を数日ずらすだけで受け取れる額が変わる場合があるので、規定を確認してから日付を決めます。詳しくは公務員の年収・退職金・雇用保険の話にまとめています。
上司への切り出し方や引き止められたときの対応は、民間企業と大きくは変わりません。具体的な言い回しは退職の伝え方とタイミングで紹介しています。
お金と保険について先に知っておくこと
公務員を辞める前に必ず押さえたいのが、雇用保険の扱いです。雇用保険法第6条第6号により、国や地方公共団体などに雇用される者のうち一定の者は雇用保険の適用除外とされており、多くの公務員は民間の会社員と同じ失業給付の対象になりません。代わりに、国家公務員退職手当法第10条などに「失業者の退職手当」の仕組みがありますが、受け取れるかどうかや金額は勤続期間や退職手当の額によって変わります。
退職手当の計算、民間に移ったときの年収の変わり方、共済組合から健康保険への切り替えなど、お金の話は公務員から転職したときの年収・退職金・雇用保険で詳しく扱っています。
公務員を辞める前のチェックリスト
最後に、退職を申し出る前と、退職日までに確認しておきたい項目をまとめます。
- 辞めたい理由を書き出し、異動や休職などで解決できないかを確認した
- 転職先の内定を得ている、または退職後の生活費の見通しが立っている
- 国家公務員の場合、応募先が職務の利害関係企業等に当たらないか確認した
- 許可なく営利企業で働く、報酬を得る活動をしていない
- 再就職を約束した場合の届出が必要かを人事担当に確認した
- 辞職願の様式・提出先・承認までの流れを確認した
- 退職日を、年度末・賞与の基準日・引継ぎ期間を踏まえて決めた
- 担当業務の一覧と引継ぎ資料を用意した
- 雇用保険の適用の有無と、失業者の退職手当の扱いを確認した
- 共済組合の脱退後の健康保険・年金の手続きと、住民税の支払い方法を確認した
- 身分証・貸与物の返却と、私物の持ち帰りを計画した
- 守秘義務が退職後も続くことを理解し、持ち出す資料がないか確認した
民間企業での働き方の実態を見極めたい場合は、ホワイト企業の見分け方も確認しておくと、「辞めてよかった」と思える転職先を選ぶ判断材料になります。
まとめ:辞める理由を分けてから、手続きを順番に進める
公務員を辞めたいと思ったら、まず理由を整理し、異動・休職・休業・相談窓口といった辞めずに変えられる手段を確認します。それでも解決しない理由、つまり仕事内容や給与体系、働き方そのものを変えたいのであれば、転職を前向きに検討する価値があります。在職中の転職活動では、兼業の許可制と、国家公務員の利害関係企業への求職規制を必ず意識してください。辞めると決めたら、上司に口頭で伝え、書面で辞職を申し出て、時期と引継ぎ、お金の手続きを一つずつ片づけていきます。転職の進め方に迷うときは、リードキャリアのような人材紹介会社に相談して、公務員経験をどう伝えるかを一緒に整理するのも一つの方法です。
よくある質問
公務員は在職中に転職活動をしてもいいのですか。
公務員の退職は何か月前に伝えればいいですか。
退職を申し出ても、辞めさせてもらえないことはありますか。
公務員を辞めたら失業保険はもらえますか。
心身の不調で辞めたいときは、すぐ退職したほうがいいですか。
公務員を辞めてよかったと感じるのはどんな人ですか。
この記事を書いた人
リードキャリア キャリアアドバイザー
人材紹介の現場で求職者と企業の双方に向き合い、ホワイト企業に絞った転職支援を行う。SNSでは採用の裏側や企業選びの考え方を発信し、複数アカウントで累計数万人に届ける。


