公務員から民間への転職ガイド|難しい理由と進め方・退職手続き

この記事の要点
- 公務員から民間への転職は珍しくない。令和6年度に地方公務員の普通退職者(他団体への異動等を除く)は69,647人で、約半数が40歳未満だった。
- 難しいと言われる主な理由は、経験を民間の言葉に置き換えられていないことと、転職活動の進め方を知らないこと。能力の問題ではない。
- 退職は本人の申出を任命権者が承認する形で行われる。内定承諾後に退職願を出し、守秘義務と再就職に関する規制を確認しておく。
- 後悔の多くは、年収の内訳・退職金・雇用保険の扱いを確認しないまま辞めたことから起きる。お金の確認は退職を伝える前に済ませる。
目次
公務員から民間企業への転職は、珍しいことでも特別に難しいことでもありません。総務省の調査では、令和6年度に自己都合などで退職した地方公務員(他の自治体や国への異動に伴う退職などを除く)は69,647人にのぼります。つまずく人に共通するのは、公務員としての経験を民間の言葉に置き換えないまま応募していることと、退職の段取りを知らないまま動き出していることです。この記事では、転職活動の全体像を順番に整理し、年代別・お金・書類などの各論はシリーズの個別記事に案内します。
数字で見る公務員の退職:民間へ移る人はどれくらいいるか
最初に、公的な統計で確認できる範囲を整理します。前提として、総務省・人事院の統計は「どういう理由で辞めたか」を集計しており、「辞めた後に民間企業へ転職したか」は集計していません。そのため、民間へ移った人数そのものは公的統計からは分かりません。ここで示すのは、民間への転職を含む自己都合の退職がどれくらいあるか、という目安です。
| 区分 | 年度 | 数値 |
|---|---|---|
| 地方公務員の離職者数(全体) | 令和6年度 | 135,027人 |
| うち普通退職(自己都合退職などを含む) | 令和6年度 | 78,760人(58.3%) |
| 普通退職者から他団体・国への異動等を除いた人数 | 令和6年度 | 69,647人(令和5年度は67,046人) |
| 上のうち40歳未満 | 令和6年度 | 35,565人(約51%) |
| 一般職国家公務員の離職者数 | 令和5年度 | 19,435人 |
| うち辞職(人事交流によるものを除く) | 令和5年度 | 8,276人 |
| 総合職試験採用職員の採用後10年未満の退職者数 | 令和2年度 | 109人(平成25年度比33人・43.4%増) |
地方公務員:自己都合などの退職は年間約7万人
総務省の「地方公務員の退職状況等調査」によると、令和6年度に地方公共団体を離職した職員は135,027人で、このうち普通退職は78,760人でした。普通退職とは、定年・勧奨・懲戒免職などのどれにも当たらない退職のことで、自己都合による退職が中心です。ただしこの中には、他の自治体や国の職員になるための退職(9,113人)や、定年前再任用短時間勤務になるための退職(4,513人)も含まれています。
他の自治体や国への異動などを除いた普通退職者は69,647人で、年齢別では25歳未満が5,655人、25〜29歳が12,644人、30〜34歳が9,845人、35〜39歳が7,421人でした。40歳未満で約半数を占めます。令和5年度の同じ区分は67,046人で、若い年代の自己都合退職が一定数あることは毎年の統計から読み取れます。
国家公務員:若手総合職の退職が増えている
人事院の年次報告書によると、令和5年度の一般職国家公務員の離職者は19,435人で、全職員の離職率は6.8%でした。人事院月報の内訳では、このうち辞職が13,039人で、府省間の人事交流によるものを除くと8,276人です。また人事院の調査では、総合職試験で採用された職員のうち採用後10年未満で退職した人は令和2年度に109人で、平成25年度から43.4%増えました。採用後5年未満の退職率も、平成25年度採用者の5.1%から平成28年度採用者は10.0%に上がっています。
公務員と民間企業の違い:転職前に知っておくべき5つの点
民間への転職で戸惑う点は、仕事の中身よりも、評価のされ方や働き方のルールにあることが多いです。主な違いを表にまとめます。民間企業は会社ごとに制度が大きく違うため、右の列は傾向として読んでください。
| 項目 | 公務員 | 民間企業 |
|---|---|---|
| 身分・雇用の根拠 | 国家公務員法・地方公務員法にもとづく任用 | 会社との労働契約 |
| 給与の決まり方 | 法律・条例にもとづく俸給表(給料表) | 会社ごとの賃金制度。成果や職務で差がつく会社も多い |
| 人事評価 | 法律で定期的な人事評価が義務づけられている | 会社ごとに制度が異なり、評価が年収に直結しやすい |
| 異動 | 数年ごとの定期異動で部署や業務が大きく変わることが多い | 職種別採用が多く、同じ職種の中で経験を積むことが多い |
| 副業・兼業 | 許可制。営利企業の役員兼務や自営は原則として制限される | 就業規則で定める。届出制や許可制など会社による |
評価:「何をしたか」より「何を生んだか」を聞かれる
公務員にも人事評価制度はあり、国家公務員法・地方公務員法で定期的な実施が定められています。ただ、民間企業の選考では、担当した業務の範囲に加えて、それによって売上・コスト・件数・期間がどう変わったかを聞かれることが多くなります。公務の成果は数字にしにくいものもありますが、処理件数・対応人数・予算規模・短縮できた期間など、置き換えられる数字は意外と多くあります。
異動:ゼネラリスト経験は「幅」として説明する
数年ごとに部署が変わる働き方は、民間の職種別採用とは噛み合いにくい面があります。一方で、窓口・企画・予算・庁内調整と幅広く経験していることは、管理部門や営業企画などでは評価される材料になります。経験の棚卸しの方法は公務員の職務経歴書と自己PRの書き方で詳しく解説しています。
副業規定:在職中の準備は「副業」に当たらない範囲で
国家公務員は国家公務員法第103条・第104条で、地方公務員は地方公務員法第38条で、営利企業の役員を兼ねることや報酬を得て事業に従事することが制限されており、行う場合は許可が必要です。転職の準備として資格の勉強をしたり、転職サイトに登録したりすることは報酬を得る活動ではないため、通常は問題になりません。一方、「民間での実績づくり」のつもりで報酬を受け取って仕事を請けると、許可がない限り規定に抵触するおそれがあります。
公務員の転職が「難しい」と言われる3つの理由
「公務員からの転職は難しい」という声は多く聞かれます。ただ、その理由を分解すると、多くは準備で対処できるものです。
- 経験が民間の言葉になっていない:「〇〇課で△△を担当」と部署名と業務名だけを書くと、民間の採用担当者には仕事の中身が伝わりません。
- 希望条件と市場がずれている:公務員の給与は手当を含めて安定しているため、未経験職種に移ると年収が下がることがあります。年収の比べ方は公務員の転職とお金の話で整理しています。
- 転職活動の進め方を知らない:新卒で公務員になった人は、中途採用の選考の流れや、在職中の動き方を経験していないことが多いです。
1つ目の「言葉の置き換え」は、書き方を少し変えるだけで伝わり方が大きく変わります。次の表は、公務員の業務を民間の採用担当者が読み取りやすい表現に置き換えた例です。実際に書くときは、担当した件数や期間など、ご自身の数字を入れてください。
| 公務員としての書き方 | 民間向けの言い換え |
|---|---|
| 市民課で窓口業務を担当 | 住民票・各種証明の発行窓口で、1日あたりの来庁者対応と書類審査を担当。正確さと待ち時間短縮を両立させる運用を経験 |
| 予算要求・決算業務に従事 | 所管事業の予算編成と執行管理を担当。関係部署との調整を経て予算案を取りまとめた経験 |
| 補助金の交付事務を担当 | 申請受付から審査・交付決定・実績確認までの一連の業務を担当。要件にもとづく審査と申請者への説明を経験 |
| 庁内の調整業務 | 複数部署・外部団体との利害調整を行い、合意形成までの進行管理を担当 |
年齢による違いもあります。20代は未経験の職種でも採用されやすく、30代以降は経験との接続を問われやすくなります。20代の方は20代公務員の転職を、職種を変える前提の方は未経験転職の進め方もあわせて読んでください。
公務員から民間への転職の進め方:6つのステップ
全体の流れは一般的な転職と同じですが、公務員ならではの確認事項が途中に入ります。退職の申出は最後です。内定が出る前に辞意を伝える必要はありません。
- 辞める理由と、転職で叶えたいことを整理する「異動で専門性がつかない」「評価が給与に反映されにくい」など、不満を具体的にしたうえで、転職先に求める条件に言い換えます。辞めるべきか迷っている段階なら、先に公務員を辞めたいときに確認することを読んでください。
- お金と制度を確認する現在の年収の内訳(基本給と各種手当)、退職手当の見込み額、共済から健康保険・年金への切り替えを確認します。公務員は原則として雇用保険の対象外のため、辞めてから仕事を探す場合の生活費も見積もっておきます。
- 経験を棚卸しして職務経歴書を作る部署ごとに、担当業務・規模(件数、予算、人数)・工夫した点・結果を書き出します。書き方の基本は職務経歴書の書き方、公務員向けの言い換えは公務員の職務経歴書にまとめています。
- 応募先の業界・職種を決めて求人を探す経験が生きる職種と、未経験から挑戦したい職種を分けて探します。転職サイトとエージェントの使い分けは転職サイトとエージェントの違いを参考にしてください。
- 在職中に応募・面接を進める面接は有給休暇や勤務時間外を使って進めます。職場に知られない進め方は在職中の転職活動で解説しています。
- 内定承諾後に退職願を出し、引き継ぐ入社日から逆算し、所属長に退職の意思を伝えます。年度末や人事異動の時期は職場の調整が重なるため、余裕を持って伝えると話が進みやすくなります。
退職手続きの流れ:国家公務員法・地方公務員法での扱い
公務員の退職は、民間の会社員とは法的な仕組みが異なります。国家公務員法第61条は、職員の退職は任命権者が法律と人事院規則に従って行うと定めており、人事院規則8-12第51条では、職員から書面で辞職の申出があったときは、特に支障のない限り承認するものとされています。つまり、退職願を書面で出し、任命権者がそれを承認して退職となるのが基本の流れです。地方公務員の場合も、退職願を提出して任命権者の承認を受ける流れが一般的で、具体的な手続きは各自治体の規則や要綱で定められています。
- 所属長に口頭で退職の意思を伝える内定承諾後、直属の上司に伝えます。相談ではなく決定事項として、退職希望日とあわせて伝えると調整が早く進みます。伝え方の基本は退職の伝え方とタイミングを参考にしてください。
- 退職願を書面で提出する所属の人事担当から指定の様式が示されることが多いので、確認してから提出します。退職日は入社日の前日までに設定します。
- 任命権者の承認と辞令承認されると、退職の辞令(人事異動通知書など)が交付されます。民間の会社のように「退職届を出せば一定期間後に自動的に辞められる」という形ではない点に注意が必要です。
- 引き継ぎと、貸与物・身分証の返却職員証や貸与パソコンなどを返却し、担当業務の引き継ぎ書を残します。
- 退職後の手続き共済組合の資格を失うため、転職先の健康保険・厚生年金に加入します。退職手当の受け取り、住民税の徴収方法の切り替えも確認します。
退職前後に確認しておきたい2つの規制
- 守秘義務は退職後も続く:国家公務員法第100条・地方公務員法第34条により、職務上知った秘密は辞めた後も漏らしてはいけません。面接で前職の具体的な案件を話すときも、公表されている範囲にとどめます。
- 国家公務員の在職中の求職規制:国家公務員法第106条の3により、職務に利害関係のある企業等に対して、在職中に自分を売り込んだり、再就職の約束をしたりすることが禁止されています。応募先が現在の職務の利害関係先に当たらないか、事前に確認します。
- 退職後の働きかけの規制:国家公務員法第106条の4・地方公務員法第38条の2により、再就職した人が元の職場の職員に契約などで便宜を図るよう依頼することは禁止されています。
公務員から民間への転職でよくある失敗と後悔
「公務員を辞めて後悔した」という声の多くは、転職そのものよりも、確認不足や順番の間違いから生まれています。代表的なものを挙げます。
1. 次を決めずに辞めてしまう
公務員は原則として雇用保険の対象外です。雇用保険法第6条は、国や自治体に雇用される人のうち、離職時に受ける給与(退職手当など)が失業給付の内容を超えると認められる人を適用除外としています。会社員と同じ感覚で「辞めてから失業給付を受けながら探す」と考えていると、収入の空白が想定より長く続くことがあります。
2. 額面の年収だけで比べてしまう
公務員の給与には、地域手当・住居手当・扶養手当・期末勤勉手当などが含まれます。求人票の想定年収と比べるときは、手当や賞与の扱いをそろえないと、入社後に「思ったより手取りが少ない」となりがちです。退職手当も勤続年数と退職理由で計算が変わります。詳しくは公務員の転職とお金の話にまとめています。
3. 「安定」の中身を確かめずに会社を選ぶ
公務員から民間に移るときに、残業時間・休日・離職率といった働き方の安定を条件に挙げる方は少なくありません。ところが、求人票の印象や知名度だけで選ぶと、入社後のギャップにつながります。平均勤続年数や有給取得率など、確認できる指標で比べてください。見方はホワイト企業の基準で解説しています。
4. 「公務員だったから」を前面に出しすぎる
面接で「公務員として法令にもとづき正確に処理してきた」とだけ伝えても、民間の仕事でどう生きるかは伝わりません。正確さ・調整力・説明力を、応募先の業務の場面に当てはめて話すことが大切です。また、退職理由を前職への批判として話すと印象が下がりやすいため、前向きな言い方に整えておきます。
状況別に読む:公務員の転職シリーズ
この記事は全体像をまとめたものです。気になるテーマに合わせて、次の記事で詳しく確認してください。
| こんなとき | 読む記事 |
|---|---|
| 辞めるかどうか迷っている | 公務員を辞めたいときに確認すること |
| 20代で民間に移りたい | 20代公務員の転職 |
| 年収・退職金・保険が心配 | 公務員の転職とお金の話 |
| 職務経歴書・自己PRが書けない | 公務員の職務経歴書と自己PR |
| 転職活動そのものが初めて | 転職の始め方 完全ガイド |
リードキャリアでも、公務員から民間企業への転職を考えている方の相談を受けています。経験の言い換えや応募先の選び方など、一人で判断しにくい部分から相談していただいて構いません。
まとめ:公務員からの転職は「順番」で決まる
公務員を自己都合で辞める人は、統計上も毎年まとまった数がいます。民間への転職が難しいと感じる原因の多くは、経験の伝え方と進め方の問題で、準備で対処できます。順番は、理由の整理、お金の確認、経験の棚卸し、在職中の応募、内定後の退職申出です。退職は書面で申し出て任命権者の承認を受ける流れになるため、守秘義務や再就職の規制とあわせて、早めに確認しておくと安心です。
よくある質問
公務員から民間企業への転職は難しいですか。
公務員から民間に転職する人はどれくらいいますか。
公務員は辞めるとき何か月前に伝えればいいですか。
在職中に転職活動をしても問題ありませんか。
公務員を辞めたら失業保険はもらえますか。
公務員から転職して後悔するのはどんなケースですか。
この記事を書いた人
リードキャリア キャリアアドバイザー
人材紹介の現場で求職者と企業の双方に向き合い、ホワイト企業に絞った転職支援を行う。SNSでは採用の裏側や企業選びの考え方を発信し、複数アカウントで累計数万人に届ける。


