内定承諾の期限は延ばせる?保留の伝え方例文と承諾前の確認事項

この記事の要点
- 内定の回答期限を定めた法律はなく、企業が採用計画に合わせて決めている。理由と希望日をはっきり示せば、延長に応じてもらえることは珍しくない。
- 延長のお願いは期限の前に、理由・希望日・入社意欲の3点をそろえて伝える。期限当日や期限後の連絡は避ける。
- 承諾の前に、労働条件通知書(労働基準法15条・施行規則5条)で賃金・労働時間・就業場所と業務の変更の範囲などを書面で確認する。
- 承諾後の辞退も法的にはできるが、企業側の負担は大きい。迷いを残したまま承諾しないことが一番の対策になる。
目次
結論から書きます。内定承諾の期限は、理由と希望日をはっきり伝えれば延ばしてもらえることが多く、お願いすること自体は失礼ではありません。回答期限を定めた法律はなく、期限は企業が採用計画に合わせて決めているものだからです。ただし、延長をお願いするのは期限の前まで。そして承諾する前には、労働条件通知書で条件を書面で確かめてください。この記事では、期限の仕組み、延長の伝え方と例文、承諾前の確認項目、複数内定の比べ方、承諾後に辞退する場合の考え方を、エージェントとして内定の調整に立ち会う立場から順に説明します。
内定承諾の期限はどう決まっているのか
転職の内定には、ほとんどの場合「〇日までにご回答ください」という回答期限がついています。この期限は法律で決まっているものではありません。企業が、ほかの候補者の選考状況や入社予定日から逆算して決めています。中途採用では、内定通知から数日〜1週間程度で区切られることが多く、エージェント経由の場合は担当者を通じて期限が伝えられます。
企業が期限を設ける理由は単純です。あなたが辞退した場合に、次点の候補者へ連絡する必要があるからです。次点の候補者もほかの会社の選考を受けているため、回答を長く待つほど、その人を失うおそれが高まります。期限は「早く決めてほしい」という圧力ではなく、採用計画を組むための区切りだと考えると、延長のお願いの仕方も見えてきます。
| 状況 | 期限の傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 1名の欠員補充 | 短くなりやすい | 次点の候補者を待たせており、穴を早く埋めたい |
| 入社日が近い・急募 | 短くなりやすい | 入社手続きや受け入れ準備の時間が必要 |
| 複数名の採用枠 | 延ばしやすい | 1人の回答を待っても計画が崩れにくい |
| 専門職・管理職の採用 | 延ばしやすい | 代わりの候補者が見つかりにくく、本人を確保したい |
| オファー面談・条件調整が残っている | 延ばしやすい | 条件が固まるまで回答を求めにくい |
期限を延ばしてもらえるかどうかの判断基準
延長のお願いが通るかどうかは、企業の事情と、こちらの理由の伝わり方で決まります。企業が知りたいのは「待てば入社してくれる見込みがあるのか」「いつまで待てば結論が出るのか」の2点です。この2点に答えられる理由であれば、延長は検討してもらえます。
受け入れられやすい理由
- 選考中の他社の最終結果が〇日に出る予定で、両方の結果をそろえて決めたい
- 家族と勤務地・転居について話し合う時間がほしい
- 労働条件通知書の内容を確認してから回答したい(書面がまだ届いていない)
- 現職の繁忙期で、退職時期の見通しを確認してから回答したい
延長が難しくなる伝え方
- 「少し考えたいので」と理由も期日も示さない
- まだ応募していない会社を受けたいので待ってほしい、と伝える
- 延長を何度も重ねてお願いする
- 期限当日の夕方や、期限を過ぎてから連絡する
他社の選考結果を待ちたいという理由は、正直に伝えて問題ありません。転職活動で複数社を並行して受けるのは企業側も分かっています。隠して「家庭の事情で」とぼかすより、「〇日に他社の最終面接があり、その結果を受けて決めたい」と伝えたほうが、企業も待つ期間を判断しやすくなります。延長の目安は、元の期限から数日〜1週間程度です。それ以上かかる見込みなら、先に担当者へ相談してください。
期限延長の伝え方:手順と例文
- まずお礼と入社への関心を伝える延長のお願いは、内定へのお礼から入ります。そのうえで、前向きに考えていることを一言添えます。企業が一番心配しているのは「待っても辞退されるのではないか」という点だからです。
- 延長したい理由を1つ、具体的に伝える理由は複数並べず、決め手になっているものを1つに絞ります。他社の結果待ちなら、その結果が出る日付も伝えます。
- 回答できる日を自分から示す「いつまで待っていただけますか」と聞くのではなく、「〇月〇日までにお返事します」と日付を示します。企業は可否を判断しやすくなります。
- 電話で伝え、メールでも残す直接応募の場合は採用担当者に電話で伝え、同じ内容をメールでも送ります。言った・言わないを防げます。エージェント経由なら担当者に伝えれば、企業との調整は担当者が行います。
- 約束した日より前に回答する延ばしてもらった日を過ぎるのは避けてください。結論が早く出たら、約束の日を待たずに連絡します。
電話で伝える例文
お世話になっております。先日内定のご連絡をいただきました〇〇です。改めまして、内定をいただきありがとうございます。御社には前向きに入社を考えております。実は、選考が進んでいる会社がもう1社あり、〇月〇日に最終結果が出る予定です。両方の結果をそろえたうえで、迷いなくお返事したいと考えております。大変恐縮ですが、ご回答を〇月〇日までお待ちいただくことは可能でしょうか。例文:回答期限の延長をお願いする(電話)
メールで送る例文
件名:内定のご回答期限についてのご相談(氏名)/株式会社〇〇 人事部 〇〇様 お世話になっております。〇〇です。このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。〇月〇日までにご回答をとのことでしたが、勤務地の変更を伴うため、家族と転居の時期について話し合う時間をいただきたく、ご相談のご連絡を差し上げました。誠に勝手なお願いですが、ご回答を〇月〇日までお待ちいただくことは可能でしょうか。御社への入社は前向きに検討しております。ご検討いただけますと幸いです。例文:回答期限の延長をお願いする(メール)
エージェントの担当者に伝える例文
〇〇株式会社の内定、ありがとうございます。前向きに考えていますが、△△社の最終面接が〇日にあり、その結果を見て決めたいと考えています。〇日までお返事を待っていただけるか、企業様に確認していただけますか。難しいようであれば、期限までに結論を出しますので教えてください。例文:エージェント経由で延長をお願いする
エージェント経由の場合は、他社の選考状況も含めて担当者に正直に話してください。担当者は企業の採用状況を知っているので、どのくらいなら待ってもらえそうかの見当がつきます。並行している他社の選考日程を前倒しできないか、そちらの担当者に相談するという手もあります。転職エージェントの使い方でも書いていますが、選考状況を隠すと調整の手段が減ります。
承諾する前に確認すること:労働条件通知書
延長を待ってもらっている間にやるべきことは、条件の確認です。労働基準法15条1項は、使用者が労働契約を結ぶときに、賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。そのうち一部の事項は、労働基準法施行規則5条により書面の交付で明示することになっています(本人が希望した場合はメールなどでも可)。この書面が、一般に「労働条件通知書」と呼ばれるものです。
| 項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 労働契約の期間 | 正社員(期間の定めなし)か、契約社員などの有期契約か |
| 有期契約の更新の基準 | 更新の有無と判断基準。更新回数や通算期間の上限があればその内容 |
| 就業の場所・従事する業務 | 入社直後の勤務地と仕事内容に加え、将来の変更の範囲 |
| 始業・終業の時刻、残業の有無、休憩、休日、休暇 | 所定労働時間、残業の有無、休日の数え方、交替制の有無 |
| 賃金の決定・計算・支払いの方法、締切日と支払日 | 基本給と手当の内訳、固定残業代の有無と時間数 |
| 退職に関する事項(解雇の事由を含む) | 退職の手続き、定年など |
2024年4月からは、すべての労働契約の締結時に「就業場所・業務の変更の範囲」も明示事項に加わりました。厚生労働省のリーフレットでは、変更の範囲を「将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲」と説明しています。勤務地にこだわりがある人は、入社直後の勤務地だけでなく、この欄に何が書かれているかを必ず確認してください。
承諾前のチェックリスト
- 労働条件通知書(または同じ内容の書面・メール)を受け取っている
- 提示年収の内訳が分かる(基本給・各手当・賞与の扱い)
- 固定残業代がある場合、その時間数と超過分の支払い方が書かれている
- 勤務地と業務内容の「変更の範囲」を確認した
- 試用期間の有無・期間・その間の条件の違いを確認した
- 求人票や面接で聞いた条件と食い違う点がない
- 入社日が現職の退職手続きと両立できる
求人票と内定時の条件が違うこと自体は、起こりえます。職業安定法5条の3は、求人の際に示した業務内容や労働条件を変更して労働契約を結ぼうとする場合、変更内容を明示しなければならないと定めています。食い違いを見つけたら、承諾の前に「求人票では〇〇とありましたが、こちらの条件で確定でしょうか」と確認してください。年収の提示額そのものに納得がいかない場合の伝え方は、希望年収の答え方の記事で扱っています。
複数内定の比べ方:4つの手順
期限を延ばしてもらう理由で一番多いのが、複数の内定を比べたいというものです。比べるときに迷う原因は、条件を同じ物差しで並べていないことにあります。次の手順で、感覚ではなく項目ごとに比べてください。
- 転職の目的を1行で書き直す「年収を上げたい」「残業を減らしたい」「専門性を伸ばしたい」など、転職を決めたときの理由を思い出します。比べる軸はここから決まります。
- 譲れない条件を2〜3個に絞る全部の項目で勝つ会社は、まずありません。目的に直結する条件だけを「譲れない条件」とし、それ以外は差があっても許容する前提で比べます。
- 労働条件通知書の数字で横に並べる年収は総額だけでなく、固定残業代の有無と時間数をそろえて比べます。固定残業代込みの年収と、残業代が別に支払われる年収は、同じ額でも意味が違います。
- 分からない点は承諾前に質問する配属先、評価の仕組み、残業の実態など、書面では分からない点は人事に質問するか、オファー面談の場で確認します。エージェント経由なら担当者に聞くのが早い方法です。
| 比較項目 | A社 | B社 | 確認する書類・場面 |
|---|---|---|---|
| 年収(固定残業代の有無・時間数) | 労働条件通知書 | ||
| 月の所定労働時間・休日数 | 労働条件通知書 | ||
| 勤務地と変更の範囲 | 労働条件通知書 | ||
| 業務内容と変更の範囲 | 労働条件通知書・面接 | ||
| 試用期間と期間中の条件 | 労働条件通知書 | ||
| 配属先・上司・チームの規模 | オファー面談 | ||
| 評価と昇給の仕組み | オファー面談・人事への質問 | ||
| 入社日 | 人事・エージェント |
働きやすさを比べたい場合は、残業時間・有給休暇の取得状況・平均勤続年数のように、数字で確かめられる項目を使うと判断がぶれません。見方はホワイト企業かどうかを確かめるチェックリストにまとめています。オファー面談で何を聞けばよいか迷う場合は、逆質問で落ちる人の共通点の記事も、聞き方の参考になります。
内定承諾の意味と、承諾後に辞退する場合
内定を承諾すると、法的にはどういう状態になるのでしょうか。裁判例では、採用内定によって、入社日を始期とし、一定の事由があれば解約できる権利を企業側が留保した労働契約が成立したと解される場合があるとされています。厚生労働省の労働局の相談事例でも、主な判例としてこの考え方が紹介されています。ただし、内定が労働契約の成立にあたるかどうかは、内定通知や承諾書の内容、その後のやり取りなど、事案ごとに判断されます。
労働者の側から見ると、承諾後に辞退することも法律上はできます。民法627条1項は、期間の定めのない雇用について、各当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間で雇用が終了すると定めています。また、労働基準法16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ決めたりする契約を禁じています。
とはいえ、承諾後の辞退は企業に大きな負担をかけます。企業は承諾を受けて次点の候補者に不採用を伝え、入社の準備を始めているからです。辞退すると決めたら、すぐに電話で伝え、メールでも記録を残してください。辞退の連絡の具体的な文面は転職エージェントの断り方の記事に、承諾前・承諾後それぞれの例文を載せています。
保留中にやってはいけないこと
- 期限の当日まで何も連絡しない。結論が出ていなくても、状況を一度は伝える
- 延ばしてもらった期限をさらに延ばしてほしいと繰り返す
- 両方の会社に承諾しておき、後から片方を断る前提で動く
- 条件を確認しないまま、口頭の「承諾します」だけで話を進める
- 迷いの理由を自分の中で整理しないまま、期限が来たから承諾する
特に、2社に承諾しておいて後で片方を断るやり方は、承諾後の辞退と同じ負担を企業にかけます。エージェント経由なら担当者の信用にも関わり、以後の紹介にも影響します。比較が終わっていないなら、その状態のまま延長をお願いするのが正しい順番です。
迷いの理由が「条件は良いが、本当にこの会社でいいのか分からない」という漠然としたものなら、転職の軸そのものを見直す時期かもしれません。転職の始め方で整理している、転職の目的と優先順位の決め方に戻ると、判断の基準がはっきりします。リードキャリアでも、内定が出た後の比較や企業への条件確認の相談を受けています。
まとめ:期限は相談できる、条件は書面で確かめる
内定承諾の期限は、企業が採用計画のために設けている区切りで、理由と希望日を示せば延長に応じてもらえることは珍しくありません。お願いするのは期限の前に、お礼・理由・回答日の3点をそろえて伝えます。待ってもらっている間に、労働条件通知書で賃金・労働時間・就業場所と業務の変更の範囲を確認し、複数内定があれば同じ物差しで並べて比べてください。承諾後の辞退も法律上はできますが、企業側の負担は大きいため、迷いを残したまま承諾しないことが一番の対策です。
よくある質問
内定の回答期限を延ばしてほしいとお願いすると、内定を取り消されますか。
内定の回答期限はどのくらい延ばしてもらえますか。
他社の選考結果を待ちたいという理由を、正直に伝えてもよいですか。
労働条件通知書をもらう前に承諾を求められました。どうすればよいですか。
内定承諾書を出した後でも辞退できますか。
複数の内定を同時に承諾しておくのは問題ですか。
この記事を書いた人
リードキャリア キャリアアドバイザー
人材紹介の現場で求職者と企業の双方に向き合い、ホワイト企業に絞った転職支援を行う。SNSでは採用の裏側や企業選びの考え方を発信し、複数アカウントで累計数万人に届ける。


