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キャリアの教科書
ホワイト企業の見分け方

隠れホワイト企業の探し方|公的データと求人票で見つける5ステップ

公開 更新 読了 約14分
執筆: 林 祐輝

この記事の要点

  • 隠れホワイト企業は「知名度」ではなく「公的データ」で探す。社名を思い浮かべるところから始めると、消費者と接点のないBtoB企業がまるごと候補から漏れる
  • 業界の当たりは厚生労働省の雇用動向調査で付ける。一般労働者の離職率は金融・保険、建設、電気・ガス、運輸、卸売・小売、製造が産業計(11.4%)を下回る
  • 上場企業は有価証券報告書、非上場企業は厚生労働省の「しょくばらぼ」で、平均勤続年数・残業時間・有給取得・新卒の定着状況を確認できる
  • 求人票は社名ではなく「製品・取引先・職場情報の開示の有無」で読む。年間休日は就労条件総合調査の平均(労働者1人平均116.6日)と比べると判断しやすい
目次

隠れホワイト企業は、社名から探すと見つかりません。見つけるには「業界の統計で当たりを付ける」「上場企業は有価証券報告書、非上場企業は厚生労働省の『しょくばらぼ』で数字を確かめる」「求人票は社名ではなく製品と取引先で読む」という順番で進めるのが近道です。この記事では、人材紹介の現場で企業を探しているキャリアアドバイザーの立場から、公的なデータだけを使って隠れホワイト企業を見つける5つの手順を解説します。

隠れホワイト企業とは:働きやすいのに検索されにくい会社

「隠れホワイト企業」に法律上の定義はありません。この記事では、「人が辞めにくく、残業や休日の条件が平均より良いのに、転職先として見ている人が少ない会社」という意味で使います。働きやすさそのものの判定方法はホワイト企業の見分け方(15のチェック項目)で詳しく解説しているので、ここでは「どうやって候補を見つけるか」に絞ります。

隠れてしまう理由は、会社の質ではなく「目に触れる機会」にあります。代表的なのは次の3つです。

  • BtoB(企業向け)の事業で、一般消費者が製品やサービスに直接触れない
  • 部品・素材・設備・インフラなど、完成品の「中」や「裏側」で使われるものを作っている
  • 採用の広告にお金をかけず、求人の数が少ない(人が辞めないので、そもそも募集が少ない)

特に3つ目は見落とされがちです。人が辞めない会社は欠員が出にくく、求人が常に出ている状態になりません。転職サイトで「よく見かける会社」ほど人の出入りが多い可能性があり、逆に、たまにしか求人が出ない会社のほうが当たりであることは珍しくありません。

ステップ1:業界の当たりを統計で付ける(BtoB・インフラ・素材)

最初にやるのは、会社ではなく業界を絞ることです。厚生労働省の雇用動向調査では、産業ごとの離職率が毎年公表されています。パートタイム労働者を除いた「一般労働者」の離職率を見ると、業界による差がはっきり分かります。

産業別の離職率(一般労働者、令和7年) 出典: 厚生労働省『令和7年雇用動向調査結果の概況』
産業離職率産業計との差
金融業,保険業6.3%−5.1ポイント
建設業7.9%−3.5ポイント
電気・ガス・熱供給・水道業8.0%−3.4ポイント
運輸業,郵便業8.1%−3.3ポイント
卸売業,小売業8.5%−2.9ポイント
製造業9.2%−2.2ポイント
情報通信業10.0%−1.4ポイント
産業計11.4%―
医療,福祉13.6%+2.2ポイント
サービス業(他に分類されないもの)20.3%+8.9ポイント
宿泊業,飲食サービス業21.5%+10.1ポイント

電気・ガスなどのインフラや製造業は、産業計より離職率が低い側にあります。この中でも、消費者向けの有名ブランドを持たない企業向けのメーカー(素材、化学、部品、産業機械、計測機器など)や、インフラを支える設備・保守の会社、メーカー同士をつなぐ専門商社は、知名度のわりに働きやすい会社が見つかりやすい領域です。

統計は「業界の平均」にすぎない同じ製造業でも、会社や職場によって離職率は大きく違います。統計で分かるのは「当たりが多い池」までです。どの会社が当たりかは、次のステップで個別の数字を確かめて判断します。

業界の具体像をつかむには、知名度は高くなくても数字が良い会社の実例を見るのが早道です。たとえば素材の信越化学工業、半導体製造装置の東京エレクトロン、インフラの東京ガスの記事では、有価証券報告書の数字をもとに働き方を整理しています。

隠れホワイト企業の探し方:5ステップの全体像

ここからは、業界を絞ったあとに個別の会社を見つけて確かめるまでの流れです。全体像を先に示します。

  1. 業界の当たりを付ける雇用動向調査の産業別離職率で、離職率が低い側の業界から候補を選ぶ(上のステップ1)。
  2. 有名企業の「取引先」から候補を広げる自分が知っている大手の有価証券報告書を開き、関係会社や主要な取引先から、社名を知らなかった会社を拾う。
  3. 上場企業は有価証券報告書で数字を確かめる「従業員の状況」で平均勤続年数・平均年齢・平均年間給与と、女性管理職比率・男性の育児休業取得率を確認する。
  4. 非上場企業はしょくばらぼで数字を確かめる若者雇用促進法などにもとづく職場情報(新卒の定着状況、残業時間、有給取得)が公開されているかを調べる。
  5. 求人票を「製品・取引先・開示」で読む社名の印象ではなく、何を作り誰に売っているか、職場情報をどこまで開示しているかで判断する。

ステップ2・3:上場企業は有価証券報告書で探して確かめる

上場企業は、金融商品取引法にもとづいて毎年、有価証券報告書を提出しています。金融庁の電子開示システム「EDINET」で誰でも無料で読めます。平均勤続年数などの数字の読み方は有価証券報告書の平均年収・平均勤続年数の見方にまとめているので、ここでは「探す道具」としての使い方を紹介します。

有名企業の報告書から、知らない会社を見つける

隠れホワイト企業は、有名企業の「隣」にいることが多くあります。自分が知っている大手メーカーやインフラ企業の有価証券報告書を開き、次の箇所を見てください。

  • 「事業の内容」:どの事業を、どの会社(子会社・関連会社)が担っているかが図で示されている
  • 「関係会社の状況」:子会社・関連会社の社名、事業内容、出資比率が一覧になっている
  • セグメント情報の「主要な顧客ごとの情報」:売上の大きな販売先が載っている場合がある。逆に、自分が知っている会社が「主要な顧客」として載っている報告書を探すと、その会社に部品や素材を納めている側の企業が見つかる

この方法で拾った社名を、もう一度EDINETで検索します。上場していれば、その会社の有価証券報告書で数字を確かめられます。

数字を確かめるときに見る項目

有価証券報告書の「従業員の状況」には、平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与が載っています。さらに2023年3月期の報告書からは、女性活躍推進法や育児・介護休業法で公表の対象となっている会社について、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女の賃金の差異も記載されるようになりました。

有価証券報告書「従業員の状況」で見る項目
項目探すときの見方
平均勤続年数同じ業界の他社と並べて長いか。設立年数が浅い会社は短く出やすい
平均年齢勤続年数と合わせ、若手が残っているかを読む
平均年間給与管理職を含む全体平均。同業他社との比較に使う
男性の育児休業取得率制度があるだけでなく、実際に使われているかの目安になる
女性管理職比率・男女の賃金の差異長く働き続けられる人事制度があるかの参考になる

数字は1社だけ見ても判断できません。同じ業界の3〜5社を並べて、相対的に良い会社を選ぶのがコツです。

ステップ4:非上場企業は「しょくばらぼ」と職場情報で確かめる

隠れホワイト企業の多くは非上場の中堅・中小企業です。有価証券報告書がない会社は、厚生労働省が運営する職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で調べます。企業ごとの職場情報を検索でき、複数の会社を並べて比較することもできます。2025年2月のリニューアルで、法人番号を持つすべての企業が掲載できるようになりました。

しょくばらぼで分かること

しょくばらぼには、厚生労働省の「若者雇用促進総合サイト」「女性の活躍推進企業データベース」「両立支援のひろば」の3サイトに企業が載せた情報が転載されています。主に次の情報を確認できます(どこまで載っているかは会社によって異なります)。

  • 月平均所定外労働時間(いわゆる残業時間)
  • 有給休暇の取得状況
  • 新卒者等の採用・定着状況
  • 女性の活躍状況、育児休業等の取得実績
  • 中途採用比率(直近3事業年度)、中途採用者の定着率、テレワーク制度、正社員転換制度などの独自項目

若者雇用促進法の「職場情報」の項目

若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)では、新卒者等を募集する企業に対して、職場情報を幅広く提供するよう努めることを求め、応募者などから求めがあった場合は、次の3つの類型ごとに1つ以上の情報を提供することを義務づけています。法律上の提供義務は新卒者等の募集が対象ですが、企業が公開している情報は、転職を考える人も閲覧できます。

青少年雇用情報の3類型と項目 出典: 厚生労働省『青少年の雇用の促進等に関する法律の施行等についての関係資料』
類型項目
募集・採用に関する状況過去3年間の新卒採用者数・離職者数/過去3年間の新卒採用者数の男女別人数/平均勤続年数
職業能力の開発・向上に関する状況研修の有無及び内容/自己啓発支援の有無及び内容/メンター制度の有無/キャリア・コンサルティング制度の有無及び内容/社内検定等の制度の有無及び内容
企業における雇用管理に関する状況前年度の月平均所定外労働時間の実績/前年度の有給休暇の平均取得日数/前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)/役員及び管理的地位にある者に占める女性割合

隠れホワイト企業を探すうえで最も役に立つのは、「過去3年間の新卒採用者数・離職者数」です。毎年数人ずつ採用し、3年間で離職者がほとんどいない会社は、若手が定着している職場と読めます。中途で入る場合も、配属先の雰囲気を推し量る材料になります。

認定制度と中途採用比率も手がかりになる

  • ユースエール認定:若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度。直近3事業年度の新卒者などの正社員の離職率が20%以下であることなどが基準
  • 中途採用比率の公表:常時雇用する労働者が301人以上の企業は、2021年4月から、直近3事業年度の正規雇用労働者の中途採用比率を公表することが義務になった。比率が一定ある会社は、中途で入った人が働く土台がある
  • くるみん(次世代育成支援対策推進法)・えるぼし(女性活躍推進法):しょくばらぼの特集から認定企業を探せる
情報を載せていない会社をすぐに外さないしょくばらぼへの掲載は、多くの項目が企業の任意です。載っていないことは、働きにくいことを意味しません。気になる会社が見つかったら、面接や人材紹介会社を通じて同じ項目を確認してください。

就労条件総合調査で「平均」を知り、比べる物差しを持つ

候補の会社の数字を見ても、「それが良いのか悪いのか」が分からなければ判断できません。物差しになるのが、厚生労働省の就労条件総合調査です。常用労働者30人以上の民営企業を対象に、年間休日や年次有給休暇の取得状況を毎年調べています。

年間休日と年次有給休暇の平均 出典: 厚生労働省『令和7年就労条件総合調査』
項目平均値対象年
1企業平均年間休日総数112.4日2024年
労働者1人平均年間休日総数116.6日2024年
年次有給休暇の労働者1人平均付与日数18.1日2024年(または2023会計年度)
年次有給休暇の労働者1人平均取得日数12.1日同上
年次有給休暇の労働者1人平均取得率66.9%同上

たとえば、求人票の年間休日が120日以上で、しょくばらぼに載っている有給休暇の平均取得日数が12日を上回っていれば、休みの取りやすさは全国平均より良い側にあると判断できます。逆に年間休日が105日前後なら、平均より少ない会社です。数字を単独で見るのではなく、「平均と比べてどちら側か」を確認する習慣をつけると、隠れホワイト企業を見落としにくくなります。

ステップ5:求人票で隠れホワイト企業を見落とさない読み方

隠れホワイト企業の求人票は、地味です。キャッチコピーが控えめで、写真も少なく、社名にも聞き覚えがありません。そのため、目を引く求人に流されると候補から外れてしまいます。求人票の項目ごとのチェックはホワイト企業の見分け方で解説しているので、ここでは「見落とさないための読み方」に絞ります。

隠れホワイト企業を見落とさない求人票の読み方
見る箇所見落としやすい読み方探すときの読み方
社名聞いたことがないので飛ばす社名ではなく「何を作っているか」で判断する
事業内容専門用語が多く読み飛ばす製品が何に使われ、どの業界に売っているかを調べる
取引先記載がなくても気にしない大手の名前が並ぶ会社は、仕事が安定しやすい
募集背景読まない「定年退職による補充」「増員」は健全。常に同じ職種を募集していないかも確認
年間休日120日に届かないと外す業界の慣行(交替勤務など)を確認してから判断する
職場情報の記載見ない残業時間・有給取得日数・平均勤続年数を自分から書いている会社は開示に前向き

求人サイトでの検索のしかたを変える

求人サイトで「ホワイト」「残業なし」と検索すると、そう書いている求人だけが出てきます。隠れホワイト企業は、そうした言葉を求人票に書かないことも多いので、検索の切り口を変えるのが有効です。

  • 職種名だけでなく「素材」「部品」「計測」「設備保守」「専門商社」など、事業の言葉で検索している
  • 勤務地を本社所在地だけでなく、工場や事業所のある地方都市まで広げている
  • 「年間休日120日以上」「完全週休2日制」など、数字で絞れる条件を使っている
  • 掲載期間が長い求人や、何度も再掲載されている求人に偏っていないか確認している
  • 気になった会社は、求人サイトの外(有価証券報告書・しょくばらぼ・公式サイト)で裏を取っている

地方の工場や事業所の求人に目を向けると、候補は一気に増えます。地元での転職やUIターンも視野に入れる場合は、地方・UIターンに強い転職エージェントも参考にしてください。

自分で探しきれない部分は、面接と人材紹介会社で補う

公的データで分かるのは、会社全体の数字です。配属される部署の残業時間や、上司との相性までは分かりません。そこを補うのが、面接での確認と人材紹介会社の情報です。

  • 面接の逆質問で、配属予定の部署の残業時間や、直近の離職の状況を聞く(聞き方は逆質問で落ちる人の共通点を参照)
  • 人材紹介会社には「社名を知らない会社でもよいので、平均勤続年数が長い会社を出してほしい」と条件で伝える
  • 公開されていない部署ごとの残業時間や、過去にその会社へ転職した人の定着状況を、担当者に確認してもらう

求人を公開せずに人材紹介会社だけに依頼している企業もあるため、自分の検索だけでは見つからない会社に出会えることがあります。私が所属するリードキャリアでも、面談では最初に「知っている会社名」ではなく「働き方の条件」を伺い、条件に合う会社を一緒に探しています。担当者の使い方は転職エージェントの使い方で、ホワイト企業の紹介に強いサービスの選び方は下のランキングで解説しています。

まとめると、隠れホワイト企業は探し方を変えれば見つかります。業界の統計で当たりを付け、有名企業の報告書から取引先や関係会社をたどり、有価証券報告書としょくばらぼで数字を確かめ、求人票は社名ではなく事業内容で読む。この順番で進めれば、転職サイトの上位に出てくる求人だけを見ていたときには出会えなかった会社が、候補に入ってきます。20代で初めての転職を考えている方は、20代・第二新卒に強い転職エージェントもあわせて確認してみてください。

よくある質問

隠れホワイト企業とはどんな会社ですか?
法律上の定義はありませんが、一般には「働きやすいのに、転職先として見ている人が少ない会社」を指します。企業向けの事業(BtoB)で消費者と接点がない、部品や素材など完成品の裏側で使われるものを作っている、といった理由で名前が知られていないことが多くあります。
隠れホワイト企業が多い業界はどこですか?
厚生労働省の令和7年雇用動向調査では、一般労働者の離職率が産業計(11.4%)より低いのは、金融・保険、建設、電気・ガス・熱供給・水道、運輸・郵便、卸売・小売、製造、情報通信の各業界でした。中でも企業向けのメーカーや専門商社、インフラを支える会社は、知名度のわりに働きやすい会社が見つかりやすい領域です。ただし業界の平均なので、個社の数字は必ず確かめてください。
非上場企業の平均勤続年数や残業時間はどこで調べられますか?
厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で調べられます。若者雇用促進法などにもとづいて企業が公開した、新卒者等の採用・定着状況、月平均所定外労働時間、有給休暇の取得状況などが掲載されています。掲載項目は会社ごとに異なるため、載っていない項目は面接や人材紹介会社を通じて確認します。
若者雇用促進法の職場情報は、中途採用の応募者でも見られますか?
法律で提供が義務づけられているのは、新卒者等の募集に応募する人などから求めがあった場合です。ただし、企業が若者雇用促進総合サイトやしょくばらぼ、自社の採用ページで公開している情報は、転職を考えている人も閲覧できます。中途採用の面接で同じ項目を質問することも可能です。
年間休日は何日以上あれば安心ですか?
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査では、2024年の労働者1人平均の年間休日総数は116.6日、1企業平均は112.4日でした。120日以上あれば平均を上回る水準と判断できます。交替勤務がある工場などは業界の慣行も異なるため、休日数とあわせて残業時間や有給休暇の取得日数も見て判断してください。
隠れホワイト企業は転職サイトだけで見つけられますか?
見つけられることもありますが、限界があります。人が辞めにくい会社は募集の頻度が低く、求人を公開せずに人材紹介会社だけに依頼している場合もあるためです。転職サイトでは事業の言葉や勤務地を広げて検索し、あわせて人材紹介会社に条件で探してもらうと、候補の取りこぼしを減らせます。

この記事を書いた人

林 祐輝

リードキャリア キャリアアドバイザー

人材紹介の現場で求職者と企業の双方に向き合い、ホワイト企業に絞った転職支援を行う。SNSでは採用の裏側や企業選びの考え方を発信し、複数アカウントで累計数万人に届ける。

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