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キャリアの教科書
企業研究

有価証券報告書の平均年収・平均勤続年数はどこ?見方と目安

公開 更新 読了 約10分
執筆: 林 祐輝

この記事の要点

  • 上場企業は有価証券報告書の「従業員の状況」に平均勤続年数・平均年齢・平均年間給与を必ず記載している。法律にもとづく開示なので求人票より信頼できる
  • 平均勤続年数が10年以上で、平均年齢が40歳前後なら、若手が辞めずに残っている会社と読める
  • 平均年間給与は従業員全体の平均(管理職を除くなど、算定の範囲は注記を確認)。自分の年代の実額は「平均年齢との差」で補正して読む
  • 数字は EDINET(金融庁)で無料で見られる。企業名で検索し、最新の有価証券報告書の「従業員の状況」を開くだけ
目次

求人票の「アットホームな職場」「働きやすい環境」は、どの会社にも書けます。一方で、有価証券報告書の平均勤続年数は書き換えられません。上場企業は法律にもとづいて、毎年「従業員の状況」に平均勤続年数・平均年齢・平均年間給与を開示しています。この記事では、この3つの数字で「辞めない会社」を見つける方法と、数字の落とし穴を解説します。

平均年収・平均勤続年数は有価証券報告書のどこに載っているか

有価証券報告書は、上場企業などが金融商品取引法にもとづいて毎年提出する開示書類です。その第一部「企業の概況」の中に「従業員の状況」という項目があり、次の数字が記載されています。

項目意味転職で見るポイント
従業員数提出会社(単体)と連結の人数単体の人数が少なすぎると平均値がぶれやすい
平均年齢単体従業員の平均年齢若手が多いか、ベテランが多いか
平均勤続年数単体従業員の平均勤続年数辞めずに残っているかの最も直接的な指標
平均年間給与賞与・基準外賃金を含む年間給与の平均給与水準の目安(算定の範囲は注記で確認)
求人票との違い求人票のモデル年収や「残業月10時間」は会社が自由に書けますが、有価証券報告書の数字は監査対象の開示書類に載るもので、虚偽があれば法的な責任が生じます。企業研究の出発点として、これほど信頼できる一次情報はありません。

平均勤続年数の目安:10年を境に見る

平均勤続年数は「その会社の従業員が平均で何年在籍しているか」です。業界によって水準は違いますが、転職先の候補を絞る目安としては次のように読めます。

平均勤続年数読み方
15年以上製造業大手・インフラに多い。辞める人がきわめて少ない。中途採用の枠は限られるが、入れれば長く働ける
10〜15年十分に長い。IT・サービス業でこの水準なら業界内では突出している
5〜10年業界平均的。設立年数が浅い成長企業もここに入るため、平均年齢と合わせて読む
5年未満離職が多いか、設立が新しいか、急拡大中のどれか。求人票と口コミで理由を確かめる

たとえば任天堂は平均勤続年数14.4年、オリエンタルランドは10.1年です(いずれも直近の有価証券報告書ベース)。IT・ゲーム業界で14年台という数字は、製造業大手と同じ水準であり、「入ったら辞めない会社」であることが数字だけで分かります。

平均年齢と組み合わせて読む:若手が残っているか

平均勤続年数だけでは、「若手が定着している」のか「ベテランだけが残って若手が辞めている」のか区別できません。そこで平均年齢と組み合わせます。

  • 平均年齢40歳前後・平均勤続年数12年以上:新卒や20代で入った人がそのまま残っている。理想的な形
  • 平均年齢45歳以上・平均勤続年数20年前後:ベテラン中心。若手の採用が少ないか、若手が辞めている可能性がある
  • 平均年齢33歳以下・平均勤続年数5年未満:若い会社か急拡大中。定着の実績はまだ数字に出ていない

「平均年齢から平均勤続年数を引いた数字」が入社時の平均年齢の目安になります。この数字が22〜26歳なら新卒中心、30歳を超えるなら中途採用が多い会社です。中途で入りやすいかどうかの参考にもなります。

平均年収(平均年間給与)の算出範囲と、自分の年代への補正

平均年間給与は、従業員全体の平均です。会社によっては管理職を算定から外している場合があり、その範囲は表の注記に書かれています。20代・30代前半の実額はこれより低くなります。目安として、平均年齢40歳・平均年間給与900万円の会社なら、30歳時点では600〜700万円台と考えるのが妥当です。正確な年齢別の額は口コミサイトや面接で確認してください。

落とし穴:持株会社の数字ホールディングス(持株会社)の有価証券報告書は、提出会社の従業員が本社スタッフ数十人だけというケースがあります。この場合、平均年間給与が実態より高く出ます。従業員数が極端に少ない場合は、事業会社側の数字や連結の情報を確認してください。

EDINETでの探し方(無料・3分)

  1. EDINET を開く金融庁の開示システム EDINET(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/)にアクセスします。登録は不要です。
  2. 企業名で検索する書類検索で企業名を入力し、書類種別を「有価証券報告書」に絞ります。
  3. 最新年度の報告書を開く最新の有価証券報告書を開き、目次から「従業員の状況」へ進みます。これまでは「第1 企業の概況」の中にありましたが、2026年3月期以降の報告書では「第4 提出会社の状況」の中に移っています。
  4. 3つの数字をメモする平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与を、比較したい会社ごとに並べます。3社以上並べると差が見えます。

上場していない会社は有価証券報告書がありません。その場合は、厚生労働省の「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)」で平均勤続年数や離職率を公開している会社があるので、そちらを確認してください。

数字と併せて確認すべきこと

  • 募集職種の勤務地が本社と同じか(有価証券報告書の数字は単体全体の平均で、勤務地は分からない)
  • 募集背景が増員か欠員か(勤続年数が長い会社の欠員募集は、定年退職の補充のことが多い)
  • 口コミの退職理由に同じ内容が繰り返し出ていないか
  • 面接で「配属先チームの平均勤続年数」を聞き、全社平均と差がないか確かめる
  • 持株会社の場合、事業会社側の従業員数と数字を確認する

この方法で見つかる「転職先として見ている人が少ない会社」

平均勤続年数が長く、平均年収も高いのに、転職の候補に入れる人が少ない会社は少なくありません。「開発職しかない」「新卒しか採らない」「倍率が高すぎる」という思い込みが原因です。実際は営業・経理・IT・企画の中途採用が毎年出ていて、業界外からの転職者も入っています。企業研究の記事では、こうした会社を1社ずつ有価証券報告書ベースで整理しています。

よくある質問

有価証券報告書の平均年収はどこに載っていますか?
目次の「従業員の状況」(2026年3月期以降の報告書は「第4 提出会社の状況」の中、それより前は「第1 企業の概況」の中)に、平均年齢・平均勤続年数とあわせて「平均年間給与」として記載されています。EDINET(金融庁)で企業名を検索し、最新の有価証券報告書を開くと無料で確認できます。
有価証券報告書の平均年間給与は、どういう範囲で算出されていますか?
提出会社(単体)の従業員の年間給与の平均で、賞与と基準外賃金を含みます。従業員全体の平均(算定の範囲は注記に記載)なので、20代・30代前半の実額はこれより低くなります。持株会社は提出会社の従業員が本社スタッフだけのことがあり、実態より高く出る場合があります。
平均勤続年数の目安は何年ですか?
転職先の候補を絞る目安としては10年が境です。10〜15年あれば十分に長く、15年以上は製造業大手やインフラに多い水準です。5〜10年は業界平均的、5年未満は離職が多いか設立が新しいかのどちらかなので、平均年齢と合わせて理由を確かめてください。
平均勤続年数が長ければホワイト企業と考えてよいですか?
必要条件ではありますが十分条件ではありません。勤続年数が長くても、部署によって残業や離職率は大きく違います。平均年齢との組み合わせ、募集背景、口コミ、面接での確認を併せて判断してください。
有価証券報告書の平均年収は、自分がもらえる額ですか?
いいえ。従業員全体の平均です(管理職を算定から外す会社もあり、範囲は注記に書かれています)。20代・30代前半の実額はこれより低くなります。平均年齢との差で補正し、口コミや面接で年齢別の目安を確認してください。
非上場企業の勤続年数はどこで分かりますか?
有価証券報告書はありませんが、厚生労働省の「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)」で平均勤続年数や離職率を公開している会社があります。面接で直接聞くのも有効です。
有価証券報告書はいつ更新されますか?
決算期末から3か月以内に提出されます。3月決算の会社なら6月末に最新版が出ます。企業研究の際は最新年度のものを確認してください。

この記事を書いた人

林 祐輝

リードキャリア キャリアアドバイザー

人材紹介の現場で求職者と企業の双方に向き合い、ホワイト企業に絞った転職支援を行う。SNSでは採用の裏側や企業選びの考え方を発信し、複数アカウントで累計数万人に届ける。

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